第14回 改正PFI法の概要(1)
平成23年6月にPFI法「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」が大幅に改正され、衆議院で可決・成立した。改正の要点は次の通りである。
1.対象施設に賃貸住宅、船舶・航空機・人工衛星等の移動施設とこれらの運行に必要な
施設の追加
2.特定事業の実施の見通しを公表する制度の創設
3.民間事業者によるPFIの提案
4.民間事業者による技術提案制度
5.公共施設等運営権の創設
これまでPFIは国・自治体が発案し、民間事業者の応募を経て、実施されてきた。今回の大きな改正の1点目は、民間事業者から技術提案を含めてPFIを提案することができるようになったことである。
第5条の2(実施方針の策定の提案)
1. 特定事業を実施しようとする民間事業者は、公共施設等の管理者等に対し、当該特定事業に係る実施方針を定めることを提案することができる。この場合においては、当該特定事業の案、当該特定事業の効果及び効率性に関する評価の結果を示す書類その他内閣府令で定める書類を添えなければならない。
2. 前項の規定による提案を受けた公共施設等の管理者等は、当該提案について検討を加え、遅滞なく、その結果を当該民間事業者に通知しなければならない。
民間事業者は思いつきのいい加減な提案ができるわけではなく、効果と効率性を示さなければならず、相応の調査と準備が必要になる。
自治体は、その提案を無視あるいは棚上げすることはできず、提案について検討を行い、その結果を提案者に通知しなければならない。自治体は提案があれば、必ず実施しなければならないということではないが、民間事業者はVFMの試算等を行った結果、効果・効率性を認め、提案するわけであるから、実施の可能性は低くはないであろう。ただ、提案した民間事業者がそのまま契約者となれるわけではなく、PFIとして取り上げられるにすぎない。また、提案者にPFI事業者の選定時に加点等のインセンティブが与えられるわけでもない。提案者には先にPFIを調査・評価したいわば先行利得は考えられるが、提案の労を負った事業者ではなく、PFIが決まった時点から準備をはじめた事業者が選定されることもある。その意味では、どれほど民間事業者からPFIの提案がなされるかは不明である。
自治体にあっては、検討を行い、遅滞なく、その結果を通知しなければならないが、「遅滞なく」とはどの程度の期間を示すのか明確ではなく、検討結果の妥当性等、今後の実務的な課題となろう。
対象が拡大し(ただし、道路は除かれている)、PFIの裾野が広がった。技術提案も可能となり、民間のノウハウもより取り入れられるようになる。実施の見通しの公表によって、民間事業者は早めに応募の準備ができるようになり、提案内容も充実させることができる。
政府はPFI事業規模について、2020年までに少なくとも10兆円以上の拡大(PFI施行から2009末までの11年間の累計額約4.7兆円の2倍以上)を目指すとした。
これらの改正によって、PFIが拡大する制度的な前進を見ることはできる。しかし、提案者のメリットは確かではなく、実務的な課題の処理も含め、実効性があるのか、今後の動向を注視していく必要がある。
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